多文化の視点

シェルビー・ブラウンさん
(「けん玉ひろばSPIKe」3代目管理人/山形県長井市地域おこし協力隊)

夢中になったけん玉。いつか世界大会を誘致するのが夢

シェルビー・ブラウンさん(「けん玉ひろばSPIKe」3代目管理人/山形県長井市地域おこし協力隊)

米国アーカンソー州で生まれ育った僕は、子どもの頃から体を動かすことが大好き。なかでも弟と一緒に始めたアクションスポーツ「トリッキング」に夢中になり、ひねりを入れたバク宙をやってのける僕のことを、友だちは「忍者」と呼んでいました。

日本との出合いはアニメ。「ドラゴンボール」や「ナルト」をきっかけにがぜん日本の漫画やサブカルチャーに興味を持ち、大学で2年間日本語の授業を受けて、交換留学生のプログラムに応募しました。

飛行機に乗るのも初めてだった二十歳の僕には、東京は驚きの連続でした。満員電車に度肝を抜かれ、渋谷や新宿に出かけてはすぐに疲れてしまう。そんな留学生活での一番の思い出は、石川県の珠洲市と金沢市、岩手県大船渡市でのサマーキャンプです。僕の日本語が一気に上達したのも、ホストファミリーと話したいという一心からでした。

日本で受けた親切に恩返しをしたいと、大学卒業後JETプログラムに応募。4年間、福島県石川町で英語指導助手として働いていたある日、教科書に載っていた「けん玉」に出合い、ハマってしまったのです。

動画サイトを見ながら練習を重ね、2年後の2021年には広島県で行われた「けん玉ワールドカップ」にリモート参加。そしてその大会中、「けん玉ひろばSPIKeの管理人になりませんか」という山形県長井市の募集広告を目にし、僕の人生は大きく変化しました。

長井市では、けん玉普及の一貫として長井駅前に「けん玉ひろばSPIKe」を開設。けん玉の販売や貸し出し、指導や各種イベントを開催しており、僕は世界大会から2カ月後には「地域おこし協力隊」として長井市に移住。来年2025年3月まで、ここでけん玉の楽しさを多くの人に知ってもらう活動を続けていく予定です。

けん玉の魅力は、なんといっても全身を使うスポーツであり、老若男女誰もが楽しめ、技を習得するたびに達成感が得られるところ。けん玉があれば、初対面の人同士、すぐにうち解けられるコミュニケーションツールでもあります。

いつかここ長井市にけん玉の世界大会を誘致し、けん玉を通じて日本と世界を結ぶ架け橋になりたいというのが、僕の夢です。

取材・文/井上雅惠
(2024 10/11/12 Vol. 749)

シェルビー・ブラウン
Profile

シェルビー・ブラウン●アメリカ・アーカンソー州出身。2015年に来日し、東京の大学で1年間学ぶ。アーカンソー州の大学を卒業後に再び来日し、福島県でALTとして勤務。その頃、けん玉と出合う。2021年から「けん玉ひろばSPIKe」の3代目管理人(長井市地域おこし協力隊)として山形県長井市に移住。けん玉ワールドカップに2021年から連続出場し、華麗な技を披露している。