日本ホテル協会では地球温暖化対策の取り組みとして、経団連が推進する「カーボンニュートラル行動計画」に参画し、そのフォローアップ調査として年1回、会員ホテルにおけるエネルギー使用状況調査を行っています。このたび2023年度の調査結果がまとまりましたので、ご紹介します。
日本ホテル協会では、2010年度のエネルギー消費原単位を指標として、国内の事業活動によるCO₂排出量を2030年度までに15%削減することを目標としています。
エネルギー消費原単位は、ホテル内の宿泊部門、飲食部門、宴会部門、および共用部門におけるエネルギー消費量を基に、各ホテルの状況に応じて以下2種類からいずれかを選択して算出することとしています。
1.エネルギー消費量/延床面積
2.エネルギー消費量/(延床面積×客室稼働率)
2023年度のエネルギー消費原単位指数は、進捗率118%達成
2023年度に報告があったホテル113件(有効回答数)におけるフォローアップ実績は、2010年度比で17.7%の削減、2030年度目標に向けた進捗率は118%でした。
エネルギー消費原単位指数(下図)は、LED 照明の導入など省エネへの取り組みが継続して行われたことから、2010年度以降、順調に改善しています。ただし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、客室・宴会場等の稼働が激減したことでエネルギー消費量は大きく減少したものの、客室稼働率がそれ以上に減少したため、エネルギー消費原単位は前年度比で8.1%の悪化となりました。2021年度からは客室稼働率の復調に伴い再び改善の傾向に戻り、2023年度の原単位指数は前年度比では0.2%、2010年度比では17.7%の改善となりました。
温対法調整後排出係数に基づく実CO₂ 排出量(下図)は、2013 年度以降漸減し、コロナ禍で2020年度に大きく減った後、若干増加しています。2023年度のCO₂排出量は50.9万t-CO₂であり、前年度比1.2%増、2010年度比7.2%減、2013年度比24.0%減となりました。
LED照明の導入を中心に、多くのホテルが省エネの取り組みを推進
2023年度の取り組み実績としては、多くの会員ホテルにおいて、主に照明、空調熱源、給湯熱源、空気搬送、ポンプ・ファンなどの設備を更新して消費エネルギーを削減しました。
照明設備を更新したホテルは33軒と最も多く、主に客室や宴会場、ロビー、バックヤード、廊下などへLED 照明が導入されました。次いで更新軒数が多かったのは空調熱源設備で、14軒のホテルが更新。ポンプ・ファン設備は10軒、空気搬送設備は3軒、給湯熱源設備は6軒でした。その他、太陽光パネルの設置、エレベーター、空調機フィルター、受変電設備に対する設備投資も行われました。
2023年度の投資総額は16億6438万円で、年度当たりのエネルギー削減量は原油換算1453㎘の見込み。コロナ禍の影響から回復が進んでいることもあり、省エネ投資は2022年度に比べて増加しています。
2023年度以降も積極的な取り組みに期待
日本ホテル協会の会員ホテルでは今後も同様の設備投資が行われる予定であり、2024年度以降の投資予定額は合計で79億501万円、期待される年度当たりのエネルギー削減量は原油換算683㎘となっています。
引き続き照明設備への投資を予定する会員ホテルは30軒で、宴会場や共用部などを中心に、ホテルによっては全館の照明をLEDに更新する計画も見られるなど、投資額やエネルギー削減量の規模が大きくなっています。
(2024 10/11/12 Vol. 749)