調査レポート

日本ホテル協会
「カーボンニュートラル行動計画」
2022年度フォローアップ調査報告

日本ホテル協会は、地球温暖化対策の取り組みのひとつとして、経団連が推進する「カーボンニュートラル行動計画(旧 低炭素社会実行計画)」に参画しています。また、そのフォローアップ調査として年1回、会員ホテルにおけるエネルギー使用状況調査を行い、経団連および国土交通省へ報告。2022年度の調査結果がまとまりましたので、ご紹介します。

「カーボンニュートラル行動計画」フェーズⅡへの参画にあたって、日本ホテル協会が定めた「国内の事業活動における2030年度の削減目標」は「エネルギー消費原単位を指標として、2010年度比で15%削減」というものです。

当協会として地球環境問題への取り組みの一貫性を保つこと、省エネ法におけるエネルギー消費原単位平均1%削減を重視し、CO₂排出削減を着実に達成することを目標に設定しました。

対象とする事業領域は、ホテル内の宿泊部門、飲食部門、宴会部門、および共用部門におけるエネルギー消費量。エネルギー消費原単位は、各ホテルの状況に応じて、以下2種類からいずれかを選択することとしています。

1.エネルギー消費量/延床面積
2.エネルギー消費量/(延床面積×客室稼働率)

2022年度のエネルギー消費原単位指数は、進捗率120%達成

2023年度に報告があったホテル114軒(有効回答数)におけるフォローアップ実績は、2010年度比で17.9%の削減、2030年度目標に向けた進捗率は120%でした。

エネルギー消費原単位指数(下図)は、LED 照明の導入など省エネの取り組みが継続して行われたことから、2010年度以降、順調に改善しています。ただし、2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大下、客室・宴会場等の稼働が激減したことでエネルギー消費量は大きく減少したものの、原単位指数は前年度比で0.5%の悪化となりました。2021年度からは再び改善の傾向に戻り、2022年度の原単位指数は前年度比1.7%の改善となりました。

温対法調整後排出係数に基づく実CO₂排出量(下図)は、2013年度から2019年度にかけて減少し、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり大幅に減少しました。その後は需要の回復とともに増加に転じ、2022年度のCO₂排出量は51.8万t-CO₂で、前年度比10.6%増加しました。

2022年度は照明設備の更新を中心に、多くのホテルが省エネの取り組みを推進

2022年度は、多くの会員ホテルにて、各種設備を更新して消費エネルギーを削減する取り組みが行われました。省エネルギーに寄与したものは、主に照明設備、空調熱源設備、給湯熱源設備、空気・搬送設備、ポンプ・ファン設備の5種類があります。

2022年度中に照明設備の更新を行ったと回答したホテルは26軒。この5種類の設備の中で最も多い軒数となり、主に客室や宴会場、廊下などのLED 照明の導入が行われました。

照明設備に次いで更新軒数が多かったのは空調熱源設備。11軒のホテルで更新が行われ、ポンプ・ファン設備の更新を行ったホテルは5軒、空気搬送設備は4軒、給湯熱源設備は44軒でした。その他、エレベーター、量水器、厨房機器、ガラスドームの遮熱塗装に対する設備投資も行われました。

2022年度の投資総額は8億8900万円で、年度当たりのエネルギー削減量は原油換算904KLの見込み。省エネ投資は、コロナ禍の影響で経営が厳しいところ、2021年度に引き続き、低迷しています。

また、ISO14001などの環境マネジメントの推進も行われています。19軒の会員ホテルが既にISO14001を取得し、また日本環境協会によるエコマークを取得したというホテルもあります。

2023年度以降も積極的な取り組みに期待

今年度以降も、同様の設備投資が会員ホテルで行われる予定です。2023年度以降の投資予定額は合計で37億9400万円、期待される年度当たりのエネルギー削減量は原油換算469KLです。

設備種類別にみると、LED照明への交換など照明設備への投資予定が25軒と最も多く、投資予定額は12億2100万円に上ります。空調熱源設備への更新投資予定も8軒あり、エネルギー消費削減効果は同100KLとされています。加えて、設備投資以外の計画として、3軒のホテルがISO14001取得を予定しています。