ホテル選びの決め手の一つに「朝食」を挙げる人は少なくありません。ホテル独自の工夫を凝らした取り組みや地域の特性を生かしたメニューが光るホテルの朝食を紹介します。今回は、G7伊勢志摩サミットの舞台となった三重県・賢島に立つ志摩観光ホテルの朝ごはんをいただきましょう。

英虞(あご)湾の美しい入り江を望む高台にたたずむ志摩観光ホテル。1951年の開業以来、昭和天皇をはじめ多くの賓客を迎え、2016年のG7伊勢志摩サミットでは各国の首脳が滞在したことも記憶に新しい。歴史あるリゾートホテルで、極上の朝ごはんをいただこう。
全室がスイートルームとなっている「ザ ベイスイート」の朝食は、フレッシュなハーブウォーターから始まる。ホテルの庭園で育てられたハーブの香りが、爽やかな朝の時間を心地よく満たしてくれる。
コース仕立てとなっている朝食は、地元の海の幸、山の幸がふんだんに使われている。フルーツを搾った自家製のジュースやシャンパーニュ、サラダとフルーツの盛り合わせ、季節の野菜を取り入れた温かいスープ、卵料理と自家製のパン、締めくくりはコーヒーやカフェオーレなどをお好みで。
なかでもゲストをとりこにしているのは卵料理だ。海老や鮑など海の幸を贅沢に使ったオムレツとグラチネ、海老風味のオランデーズソースといただくエッグベネディクトの3種類から選ぶことができる。


卵料理は3種類の中から選べる。写真は海の幸と卵のグラチネ(左)とエッグベネディクト(右)。
卵料理は3種類の中から選べる。写真は海の幸と卵のグラチネ(上)とエッグベネディクト(下)。
「朝食は出発前にホテルで召し上がっていただく最後の食事です。志摩観光ホテルを再び訪れたいと思っていただけるよう、ここでしかできない食体験をご提供したいと考えています」
そう語るのは、7代目総料理長の樋口宏江さん。その時々の季節感を大切に、地元の食材にとことんこだわる。
「三重県は海と山、いずれの産物も優れたものが多く、生産者の方々はとても熱心です。食材の素晴らしさだけでなく、それを作っている生産者の想いもお客様にお届けできたらと願っています」
料理を提供する際には、丁寧に食材の説明を行う。食に関心の高いお客様が多く、帰りに産物を買い求める人や自宅に戻って定期的に取り寄せる人も少なくない。生産者とお客様をつなぎ、地元を盛り立てていくこともホテルの使命だ。


リピーターのお客様が多いため、いつ訪れても楽しめる定番のメニューを用意する一方で、新たな挑戦も忘れたくない、と樋口シェフ。「お客様に新しい発見を体験していただけるよう、これからも食への追求を続けていきたいと思います」
最高の食材を、最もおいしい調理法で。志摩観光ホテルの朝食は、作り手の真摯な姿勢と食への探究心に満ちあふれている。
取材・文/編集部
(2025 1/2/3 Vol. 750)