8万人に迫るInstagram(インスタグラム)フォロワー数を持つホテル椿山荘東京。タグ付けや自社ハッシュタグでコンテンツ投稿を促し、英語のキャプションを付けた写真や動画で、日本文化と自社ホテルの魅力を世界に発信。そのSNS活用術を、マーケティンググループの橋本あかね氏に聞いた。

プライベートでも仕事でもSNSを活用中!
――複数のSNSを活用しておられますが、なかでもインスタグラムは人気のようです。その運営はどのようにしておられますか。
当ホテルには日本庭園をはじめ、視覚的に訴求できる要素が多く、その魅力を届けやすいメディアとして、インスタグラムに力を入れている面はあります。運営については、マーケティング部門のスタッフ数名でコンテンツの投稿や更新を行っています。フィード(投稿が一覧表示されるホーム画面)に上がっている写真やリール(ショート動画)は、プロのカメラマンによる季節ごとのプロモーション素材が中心ですが、私たちもスマートフォンを手に、庭園で見かけた自然の表情や、季節のスイーツなどを撮って投稿しています。
――担当の皆さんは、プライベートでもインスタグラムのユーザーなのですか。
みんな個人的にも使っていますよ。インスタグラムを見ていると、いろいろな発見や刺激があって、「この動画のカメラワーク、素敵だな。うちでもやってみよう」などと思います。社内の人からも、「海外のホテルがこんな写真を投稿してて、すごくよかったよ。真似してみたら?」と、意見をもらったりするんですよ。
――動画の投稿も充実していますね。
リールについては、撮影から編集までプロに委託しているもの、自社制作のもの、スタッフが撮影して投稿したものが中心です。ほかには実際にホテルを利用してくださった方からの投稿や、国内外のインフルエンサーが宿泊時に撮影した動画を、ご本人の許可を得て、ホテルのアカウントに投稿することもあります。

https://www.instagram.com/hotelchinzansotokyo_official/
インフルエンサーの訴求力を味方につける
――インフルエンサーと呼ばれる人たちと、そもそもどうやって知り合うのですか?
コロナ禍が落ち着いてきた頃からでしょうか、海外を中心にインフルエンサーの方々から直接、メールやDMでお問い合わせをいただくことが増えてきました。そうした方々との接点をどのように生かしていくか。海外事情に詳しい取引先にも力を借りて、インフルエンサーの影響力やホテルとの親和性なども加味して検討しています。これから認知度を上げていきたい海外市場へのアプローチの一つとして、注力している取り組みです。
インフルエンサーの投稿は、その人のフォロワーさんたちに好意的に受け止められ、どんどん拡散していく傾向があります。実際に再生回数も伸びますし。そしてある程度ホテルの認知度が高まると、今度はほかのインフルエンサーも注目してくれるようになります。
――一般からの投稿を増やすために行っていることはありますか。
もともとお客様発信による庭園での写真の投稿は多かったのですが、さらに盛り上げるために、「季節の写真を撮って、ハッシュタグを付けて投稿してください」といったキャンペーンをときどき開催しています。コンテスト寄りのキャンペーンでは、賞品を用意することもあります。そのとき限りの投稿で終わるのではなく、お客様と触れ合うことでフォロー数も増えるのが、キャンペーンの意義深いところで、皆さんにホテル椿山荘東京を知っていただくよい機会にもなっています。



霧に覆われた美しい庭園「東京雲海」や、桜やクリスマスなど季節性のあるコンテンツは国内外を問わずに人気。
海外フォロワーの拡大にも意欲
――SNSの活用について、ほかに工夫していることがあれば教えてください。
弊社のホームページ上に「Guests’ Gallery by Instagram」というコーナーを設け、お客様の投稿を表示しています。インスタグラムをやらない方でも、ホームページを見て、興味を持っていただけるとうれしいですね。
実際にホテルを利用された方の投稿には、見る人の想像力をよりリアルに膨らませる力を感じます。SNSのユーザーは20代から30代、40代くらいの方が多いので、若い皆さんに関心を持っていただき、ホテルを利用していただくきっかけになればと期待しています。私たちもSNSをご来館につなげるよう、意識して努めています。

――やっていて難しいと感じることはありませんか?
SNSのトレンドはかなり早く移り変わりますので、キャッチアップするのが難しいところです。例えばハッシュタグを付けて活発に投稿をシェアする傾向は、少し落ち着いてきたようですし、コンテンツ面ではわかりやすくてパッと情報を得られるものが、若い世代を中心に好まれるようになってきています。
SNSを適切に運用するために、最新のトレンドには常に敏感でいたいです。また管理画面からは、写真の閲覧回数や動画の再生回数などを数値として確認できますから、それも参考に、見る人の心に届くコンテンツをつくっていきたいと思います。
――今後はどのような展開を考えていますか。
海外のフォロワー獲得に力を入れていきたいです。手始めに、フィードの投稿につける日英併記を見直して、日本語より前に英語をもってくるようマイナーチェンジしました。英語が目に入りやすくなって、海外のフォロワーが増えるといいなと期待しております。
ビジュアルコンテンツ自体も、ホテル椿山荘東京ならではの日本的な魅力が十分伝わるように、これも今年から、よりシックなトーンに変更していく予定です。和装の美、日本庭園の四季、お寿司を握る板前。日本らしさいっぱいのコンテンツを投稿していこうと、張り切って準備を進めています。



今後は日本らしさを訴求するコンテンツにもより力を入れていく。
取材・文/田中洋子
(2025 1/2/3 Vol. 750)
ホテル椿山荘東京
公式サイト
https://hotel-chinzanso-tokyo.jp
公式インスタグラム
https://www.instagram.com/hotelchinzansotokyo_official/