ホテル業必⾒ 観光消費トレンド2025

「FUN(楽しさ)」をとことん追求する

品川プリンスホテル

謎解きと食事を融合したユニークな宿泊プランが、若い世代の人気を集める品川プリンスホテル。「FUN! Goes On(楽しさを紡ぐ)」を合言葉に提供されるさまざまな「FUN」とは? 注目の「没入感」を意識した取り組みを紹介する。

「FUN(楽しさ)」をとことん追求する 品川プリンスホテル

「謎解き×食事の融合プラン」が人気

品川駅から徒歩約2分、30年にわたってさまざまな「FUN(楽しさ)」を提供してきた品川プリンスホテル。今、メインタワー30周年を記念した「謎解きイベント付きステイプラン」が人気を博している。

「謎解き」そのものは、近年よく見かける流行のイベントだが、どうしてこれほどまでに注目が集まるのか。その理由は、謎解きと食事を見事に融合させた点にある。体験型謎解きイベントの企画を数多く手掛ける制作会社「謎組」とタイアップし、今までにない濃密な没入感が味わえる新しい体験に仕立て上げたのだ。

謎解きはホテルの全棟を舞台に繰り広げられるが、実はプランについている夕食(メインタワー最上階の「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」のディナー)にも、謎解きの仕掛けが隠されている。ゲームの参加者がそうとは知らず、視覚、嗅覚、味覚など五感を刺激する本格的なコース料理を実際に味わっている最中に、謎解きのヒントにハッと気づいたとしたら……。その虚実入り交じる前代未聞の演出に、興奮が一気に高まるというわけだ。

ノンフィクションゲーム「なぜ蝋燭の灯は消えたのか」では、五感をフルに使って豪華なディナーを楽しむことが事件の謎を解くカギに。
ノンフィクションゲーム「なぜ蝋燭の灯は消えたのか」では、五感をフルに使って豪華なディナーを楽しむことが事件の謎を解くカギに。

「多くのお客様から『高層階のレストランでのフルコースディナーに大満足。いい記念になった』『料理が物語とこんなにリンクしているとは思わなかった。かけがえのない体験になった』などのお声をいただいております」と話すのは、この企画を担当した谷川織恵さん(セールス&マーケティング部門マーケティングアシスタントマネジャー)。謎解きそのものの人気に加え、「謎組」ファンをも取り込むW効果で、プランの発売から日を追うごとに予約が次々と舞い込んでいるという。

「メインタワーに加え、他の3棟にもヒントがちりばめられています。『ホテルのさまざまな場所を回遊できたのが新鮮で、とても充実した時間を過ごせました』というご感想もあり、館内ツアーとしてもお楽しみいただけているようです。また、謎解きは、当ホテルにまつわるストーリー仕掛けにもなっていますので、謎解き体験をきっかけに、ホテルに親しみを感じていただけたらいいなと願っています」(谷川さん)

「FUN×没入感」で若者ファンを拡大

最近、注目されている「没入感(イマーシブ)」という概念。消費トレンドを捉えた魅力的な観光コンテンツづくりに欠かせない要素だが、品川プリンスホテルでは、すでに「没入感」を活用したサービスを実施している。

その一例が、「Anker Room」だ。Nタワーの10階を「Anker Floor」とし、各部屋にモバイル機器やプロジェクターなどで知られる家電メーカー「アンカー・ジャパン」の大型プロジェクターを設置。完全遮光のカーテンを閉めれば、たちまち私的なムービーシアターのような空間が完成する。その空間で、お気に入りの音楽や動画配信サービスに「没入」できるのだ。

「YouTubeやNetflixなどの動画配信サービスも、ゲストご自身のアカウントでログインしていただくことで、普段ご覧いただいているチャンネルを大画面のプロジェクターでお楽しみいただけます。臨場感あふれる大画面の映像と迫力あるサウンドは、『出張中、部屋で充実した時間が過ごせる』『仕事のON/OFFの切り替えになる』とビジネス利用のゲストに好評です」

Anker Roomは、「推し活」ゲストにも人気だ。好きなアイドルやアーティストのイベント前にチェックインし、大画面プロジェクターで流した映像を見れば最前列にいる気分。気持ちを盛り上げて本番のイベントを楽しみ、ホテルに戻ったらAnker Roomで熱狂の余韻を味わう。一つのイベントを3倍楽しめるホテルステイは、一度知ったらやみつきになりそうな魅力にあふれている。

壁一面に映像が広がり、没入感を満喫できるAnker Room。大画面でモバイルプロジェクターを体験できる。
壁一面に映像が広がり、没入感を満喫できるAnker Room。大画面でモバイルプロジェクターを体験できる。
Anker Roomは「推し活」にも最適。「推し色」のバルーンのコーディネートも、ファンにはたまらないサービス。
Anker Roomは「推し活」にも最適。「推し色」のバルーンのコーディネートも、ファンにはたまらないサービス。

森淳さん(セールス&マーケティング部門支配人)は、ホテルの目指す方向として「ゲストの求めるさまざまな『FUN』を提供することで、品川プリンスホテルの『FAN』になっていただけたらと考えています」と語る。ゲストの求める「FUN」と「没入感」の絶妙なマッチング。「エンターテインメントを提供するホテル」ならではの取り組みは、若い年齢層のゲストを呼び込む力となっている。

「ホテル×地域」で魅力を発信

森さんが、今後の取り組みとして重要視する視点は「品川らしさ」である。

「海外からいらっしゃるゲストには、ここ品川を基点に東京観光を楽しんでもらえるように、ネームバリューを高める仕掛けを考えています」

東海道の宿場町であったことから、高層階の和食のレストラン「味街道 五十三次」をオープン。また、すでに文化体験として「握り寿司体験」なども開催しているが、今後はこうした取り組みもホテル単体ではなく、地域と連携して盛り上げていきたいと考えている。

江戸時代から栄えた品川宿、歌川広重の「東海道五十三次」などの「品川らしさ」を感じさせる和食レストラン「味街道五十三次」。
江戸時代から栄えた品川宿、歌川広重の「東海道五十三次」などの「品川らしさ」を感じさせる和食レストラン「味街道五十三次」。

「品川には数多くの商店街があります。商店街での観光や買い物を通して、日本の歴史や伝統に触れる体験を楽しんでいただきたいと思います。地域の魅力を発信していくのも、ホテルの使命です」(森さん)

JR、私鉄、新幹線が乗り入れる品川駅の特徴に魅力を感じる鉄道ファン、羽田空港を発着する飛行機を間近に楽しむ飛行機ファン……。ゲストのさまざまな「FUN」に応えるべく、今日も品川プリンスホテルの挑戦は続いている。

取材・文/ひだいますみ
(2024 10/11/12 Vol. 749)

品川プリンスホテル(公式サイト)
https://www.princehotels.co.jp/shinagawa/