「最上質の日本」のおもてなしを目指し、提供する5つの価値の1つとして「自然との調和」を掲げるパレスホテル東京。ウェルネスをテーマにした取り組みも、そのコンセプトの下で展開されている。特筆すべきは、「エビアン スパ 東京」とデトックス宿泊プラン「Retreat & Restart」という2つのコンテンツ。ラグジュアリーホテルならではの高級感あふれるアプローチが、利用者の没入感を高めている。
5つ星を獲得した「エビアン スパ 東京」
世界のセレブを魅了するレマン湖畔の「Evian Resort」。その施設内で提供されているスパ体験を、日本で唯一体験できるのがパレスホテル東京の「エビアン スパ 東京」だ。
フレンチアルプスに降り注いだ雨は地中に染み込み、ミネラル分をバランスよく取り込みながら大自然によって磨かれていく。「エビアン スパ 東京」のトリートメントは、この「水の旅」をモチーフに、心と身体を解き放ち(Celestial)、ミネラルバランスを整え(Mineral)、新しい自分と出会い(Precious)、バイタリティを得る(Vitalizing)という4つのプロセスで構成される。
施術にはフランスと日本の洗練された手技、スパプロダクツとしては、日本ではパレスホテル東京のみで楽しめるアンヌセモナンや、オムニサンス、さらに日本ブランドの「warew」を使用。もちろんエビアン・ウォーターもトリートメントに取り入れている。
「エビアン スパ 東京」は、「フォーブス・トラベルガイド2024」のスパ部門において5つ星を獲得。日本のトップスパを決める「クリスタルアワード2024」でもTOP SPA of JAPANに輝いた。広報マネジャーの塩原沙織さんは言う。
「皇居外苑の緑に囲まれたパレスホテル東京は、もともと自然との調和を大切にしてきました。自然の恵みであり生命の源である水によって、心身のリラクセーションとリフレッシュを得るスパは、“水を通じての健康”づくりをテーマにした、パレスホテル東京らしいウェルネス・プログラムだと思います」
スパは、宿泊客だけでなくビジターでも利用できる。外国人宿泊客や、結婚式を控えた女性などに交ざり、日本男性の利用も意外と多い。「丸の内のビジネス街に近いことと、ミネラルウォーターのエビアンをご存知で、親しみを感じてくださる方が多いのかもしれません」と、塩原さん。
「ホテルのスパは、少し敷居の高い場所と思われるかもしれませんが、あまり肩肘を張らず、ゆったりと楽しんでいただきたいです。その結果、お客様が心身を解放し、活力を養い、満ち足りた気持ちで日常に戻って行かれるとしたら、私たちもうれしく思います」
コロナ禍で始まった、デトックス宿泊プラン
2021年には、このスパとジュースクレンズプログラムを組み合わせて、2泊3日のデトックス宿泊プラン「Retreat & Restart」を期間限定で販売した。コロナ禍でホテルの売り上げが落ち込み、対策を試行錯誤するなかで生まれたプランだった。
「あの頃は、リモートワークや自宅待機の方が多く、それであればこの機会に、思い切ってホテルにこもり、心と身体をメンテナンスしていただくきっかけを、と考案しました。いつも仕事や家事に追われて忙しい女性にも、一度立ち止まって自分の身体と向き合っていただきたいと思いました」
デトックス宿泊プランの中心は、ジュースクレンズプログラム。ジュースクレンズとは、新鮮な野菜や果物を絞ったジュース以外、一定期間、固形物を摂らない一種のファスティングである。ビタミンやミネラルなど栄養はしっかり摂りつつ、消化器を休めることで、老廃物の排出や免疫力のアップが期待できるという。
期間中は、バルコニー付きのデラックスキングまたはツインルームに滞在。ファスティングの前後には、おなかにやさしい準備食・回復食がインルームダイニングで用意される。さらに、「エビアン スパ 東京」のボディトリートメントも受けられるとあって、「Retreat & Restart」は好評のうち終了した。
その後は毎年、期間限定で再販を行っている。価格はそれなりに高額だが、VIPになったかのような「自分へのご褒美感」は、健康志向の女性たちの心をつかみ、リピート客も確実に獲得しているようだ。
「2023年の1月に『Retreat & Restart』を再販した段階で、すでに10回以上ご利用いただいている方がいらっしゃいました。一度このプランを体験して、それ以来、ホテルステイとジュースクレンズをライフスタイルに組み込んでくださっているそうです」
デトックス宿泊プラン「Retreat & Restart」は、2024年も12月1日から翌年2月28日まで、3カ月間の予定で販売するとのことだ。
ウェルネスとは、幸福な生活を送るために必要なこと
パレスホテル東京では、毎週土曜と日曜に、宿泊客限定でモーニングヨガの無料レッスンを行っている。晴れていれば皇居外苑を望むテラスで行うので、気持ちよく身体を動かせると好評だ。「エビアン スパ 東京」では、スパトリートメントとプールでのアクティビティをセットにした「アクア ムーブ エクスペリエンス」を販売。トレーナーの指導で、水中ストレッチやウォーキングといった有酸素運動が効果的に行える。
こうしたさまざまなプログラムを見ていくと、宿泊施設であることだけがホテルのアイデンティティではないと、今さらながらに思わされる。「コロナ禍を経て、ホテルと日本のお客様の距離感は、以前と比べてずいぶん近づいたように感じます」と、塩原さん。
「レストランでランチをする、アフタヌーンティーを楽しむ、スパに通うなど、ホテルを身近な存在として、気負わず利用される方が増えているのではないかと思います。こうしたお客様がドアを開けた瞬間、非日常の世界に足を踏み入れ、いつの間にかそこに没入していける場所がホテルではないでしょうか。そのために、こまやかなサービスやディテールにまでこだわったプログラムを提供することが、私たちの役割だと思います」
ウェルネスは、幸福な生活を送るために必要なこととして、SDGsにも盛り込まれている。身体の健康だけでなく、精神や心の健康も、仕事や経済面が順調であることも、自分を取り巻く環境面が健全であることも、その人のすべてがウェルネスに紐づいている。そうであるならば、お客様のウェルネスにホテルが貢献できる可能性はまだまだありそうだ。
取材・文/田中洋子
(2024 10/11/12 Vol. 749)
パレスホテル東京(公式サイト)
https://www.palacehoteltokyo.com