大阪・関西万博を1年後に控え、関西エリアのホテルも着々と準備を進めている。万博に向けた取り組みとともに、その期待感、ホテルとしての使命感について、ホテルグランヴィア京都、ホテルグランヴィア大阪などを擁するJR西日本ホテルズのカンパニー統括本部営業戦略部部長の出口聰氏に話を伺った。
会員へのキャンペーンで万博の機運醸成を図る
──大阪・関西万博の開催までおよそ1年となりました。地元の盛り上がりはいかがでしょうか。
お客様から万博に関するお話をいただくことは、正直なところ、まださほどありません。こうした状況を変えていくため、JR西日本グループの一員としてJR西日本ホテルズでも万博の機運醸成を⾼める⼀翼を担えたらと考え、取り組みを強化しているところです。JR西日本グループおよびホテルグループ内に万博のプロジェクトチームを⽴ち上げ、具体的な施策を検討しています。
──どのような取り組みを予定されているのでしょうか。
すでに昨年秋、開幕500日前を迎えるタイミングで、グループとしてさまざまなイベントやキャンペーンを実施しました。ホテルとしても、JR西日本ホテルズの4ブランド11ホテルで、JR西日本グループの共通ポイントサービス「WESTERポイント」の5倍キャンペーンを実施し、全館合わせて6300件ほどご利用いただきました。
WESTERポイントのキャンペーンがご好評をいただいたこともあって、1年前キャンペーンとしても、WESTERのポイントアップキャンペーンを検討しています。ポイントアップに加えて、各ホテルで使える宿泊券やレストラン券のプレゼントも予定しています。万博会期中にぜひ足をお運びいただけたらという思いを込めて、景品を集めているところです。キャンペーンの名称に「万博」と入れることで、広く機運を高めていきたいですね。
──万博に向けて、強化していきたい取り組みはどんなことでしょうか。
JR西日本ホテルズの重点的な取り組みの一つに「食の価値を上げよう」というテーマがあります。「食のグランヴィア」を多くの方に認知していただこうとさまざまな施策を行っていますが、万博期間中はレストランフェアを開催して、食の価値を高めていきたいと思っています。まだ検討段階ですが、例えば大阪名物の「粉もん」などは普段ホテルでお出しすることはあまりありませんが、ホテルがアレンジすることで新しいご提案ができるかもしれません。多くの皆様に大阪を知っていただきたいという願いがありますので、これまでのホテルの常識にとらわれず、新しいことに挑戦できたらと考えています。また、ぜひ関西エリアの食材を使いたいと思っていますので、仕入れルートの調整なども進めていく予定です。
──それは楽しみですね。食は多くの方にとって大きな関心事だと思います。
そうですね。大阪の魅力を食から発信すると同時に、万博の大きなテーマの一つである多様性も視野に入れ、「誰もが楽しめる食」を追求することも忘れてはいけません。例えばベジタリアンやムスリムの方に対応したお食事の提供やピクトグラムの共通化など、議論すべきトピックはたくさんあります。誰が行っても楽しめる、誰にとってもやさしいホテルを目指していきたいと考えています。
万博を契機にこうした取り組みを推進できるのは大変意義深いことです。これを一過性のものとせず、継続し、さらに強化していく。それが万博のレガシーとしてホテルに蓄積していくことを願ってやみません。
ホテルが先頭に立ちおもてなしの実践を
──万博は大阪だけでなく、他のエリアにとっても好機となるでしょうか。
私たちは鉄道系のグループですので、万博の効果を関西だけにとどめることなく、北陸や中国エリアへの誘致にも力を入れていきたいと考えています。点で終わらせず、面で展開していく。これが大切だと思いますので、ぜひ関西以外のエリアの魅力も積極的に発信していきたいですね。
また、これを機に旅行会社様との関係を強化し、各地域から多くの方にお越しいただくとともに、修学旅行の受け入れにも力を入れ、未来を担う若い世代にもぜひ関西に足を運んでいただきたいと願っています。
──開幕まであと1年、課題などはありますか。
万博に限った話ではありませんが、人手不足は非常に懸念しているところです。多くの方がいらっしゃる万博で100パーセントのおもてなしができるよう要員確保は喫緊の課題です。しっかりと人員を確保し、研修や育成にも力を入れていく必要があります。同時に、デジタル化も進めて人材不足を補填していくことも視野に入れています。
──あらためて、万博にかける意気込みをお聞かせください。
海外も含め多くの方がいらっしゃるなかで、必ず利用するのがホテルといってもいいでしょう。その責務は非常に大きいですし、私たちが先頭に立っておもてなしを実践していく使命があると考えています。大阪のホテルだからこそできるおもてなしなど、サービスの可能性はたくさんあります。あと1年しっかりと準備を重ねて、グループにとどまらず多くのホテルとも手を取り合いながら「関西のホテルここにあり」を示していけたらと思っています。
取材・文/編集部
JR西日本ホテルズ(公式サイト)
https://www.hotels.westjr.co.jp/