宿泊・外食業界などホスピタリティ産業の明日を担う次代のリーダーが集まり、企業の枠を超えて業界課題に挑むプレゼン大会「ネクストリーダーズ」。その2024年度最優秀チームの座を競う「全国 FINAL STAGE」が2月7日(金)、東京ビッグサイトで開催された。白熱したプレゼンテーションの様子をレポートする。

ホスピタリティ産業の課題に挑む全国選抜の精鋭チーム
宿泊業をはじめとするサービス産業、フードビジネスを対象とする⽇本最⼤級の商談展⽰会「HCJ*(エイチシージェイ)」。2025年2月4日から7日まで、東京ビッグサイトで開催された「HCJ2025」には3日間で5万人近い来場者が詰めかけ、好調なインバウンドに象徴される日本の観光振興に向けた期待の大きさが覗えた。
*HCJ:国際ホテル・レストラン・ショー、フード・ケータリングショー、厨房設備機器展の3つの展示会の総称で、それぞれの英文名称の頭文字からなる。
その最終日、広大な会場の一角に設けられた「トレンドセミナー&ステージ」でひときわ大きな注目を集めていたのが、「ネクストリーダーズ全国 FINAL STAGE」だ。
「ネクストリーダーズ」は、ホスピタリティ産業の未来を担う20〜30代の若手が企業の垣根を越えて集い、業界の発展や課題解決のために知恵を絞り、議論を重ねながら実効性ある提案を競い合う、全国規模のプレゼンテーションイベントだ。宿泊業や外食業界ではコロナ禍を生き抜いた後も、急激な人手不足や急増するインバウンド対策、DXによる省力化・生産性向上などと課題が山積する。もはや個社で課題解決を図るだけでなく、組織や業界、地域や世代をまたぐ広く大きな視野から答えを探るべきではないかと、一般社団法人日本能率協会の主催により2024年にネクストリーダーズの活動がスタートした。
この日は「ネクストリーダーズ2024」の総仕上げ。これまでに大阪、札幌、福岡、東京の4地区に分かれて発表会を実施。各地区での選考を勝ち上がった代表チームが一堂に会し、ブラッシュアップしたそれぞれのプランを持ち寄って改めて発表、全国最優秀の初代チャンピオンを決定した。
参戦したチームとテーマは以下のとおり(発表順)。審査委員長の徳江順一郎氏(東洋大学国際観光学部准教授)をはじめ、各地区の活動でファシリテーターやアドバイザーを務めてきた大学教員や企業人など14名の審査員が見守るなか、1チーム8〜10分の持ち時間でプレゼンテーションを行った。

知恵を絞り、討論を重ねて導き出した提言・施策・事業プラン
緊張感漂う中でトップバッターに立ったのは、大阪代表の「コロッケ」チーム。「DX時代におけるホスピタリティ業界の労働環境と働き方改革」をテーマに、「DXによって人がいらなくなるのは本当なのか?」などと問いを投げ掛けつつ、ユーモアたっぷりのロールプレイも織り交ぜながら聴衆を引き込んだ。最後は、「DXは私たちの仕事を奪うものではなく、むしろ最高のパートナー。私たちが最も得意とするおもてなしに集中する環境を生み出してくれる」と結んだ。
続いて登場した札幌地区代表の「道産子」チームのテーマは、「心理的安全性と離職の相関性」。離職率を下げる方法について研究し、採用選考の費用や人件費の削減、サービスの質や企業イメージの向上につなげたいと問題意識を提示。そのカギとなる職場における「心理的安全性」と、仕事に求められる厳しさなどの基準とを掛け合わせたマトリックスを示しながら、職場環境と離職理由との関係性を掘り下げていった。大事なことは自社の状態を見える化し、問題点を正しく見極め、適切に対処することだ。
三番手は福岡代表のチーム「ホー・プ」。「九州は、もう荷物で疲れない」のキャッチコピーを掲げ、Luggage Managementを実践するビジネスプランを披露した。問題提起の発端は、九州を訪れる観光客の動向を知る種々のマーケティングデータから見えてきた「九州は周遊されていない」という事実。訪日外国人の宿泊者数、目的地、滞在日数、出費の内訳、そして交通ルートなどから、すべてが福岡・熊本・大分の3県に集中することが判明した。
では、広大な九州の観光資源を生かした「周遊」を促すには? その解決への糸口としてチームは「荷物問題」に着目。手ぶら観光やMaaS(Mobility as a Service)など、すでにいくつもある地域の荷物運搬・移送サービスを結びつけ、観光客がワンストップで利用できるプラットフォームの開発・運用を事業化するプランを起案した。
トリを飾ったのは、東京代表「SMK」による「クチコミは私たちのライフを削っている!?」。消費者にとってクチコミは不可欠のツールだが、その点数評価が必ずしも現実の評価と一致するとは限らない。にも関わらず、良い点数を得ることを過剰に意識した接客に陥っているとすれば、それは本来のホスピタリティといえるのか──。この自問自答を起点として、点数評価に代わるクチコミの新しい指標を提起。施設側が自分たちの得意とする分野を設定し、それに共感する顧客とのマッチングを可能にする仕組みを提案した。




4チームそれぞれオリジナリティあふれる提案を発表。
左上から右回りに、大阪「コロッケ」、札幌「道産子」、福岡「ホー・プ」、東京「SMK」の各チーム。
4チームそれぞれオリジナリティあふれる提案を発表。
上から順に、大阪「コロッケ」、札幌「道産子」、福岡「ホー・プ」、東京「SMK」の各チーム。
日本の観光産業を担うチカラを次代へつなぐ
こうして約1時間に及ぶ提案コンテストが終了。審査員による評価の対象となったのは、プレゼンテーションの巧さ、論理的整合性、客観性、普遍性、そして実現可能性など。果たしてそれらの評価で最高点をマークし、「どのチームが優勝してもおかしくないほど実力僅差の戦い」(徳江審査委員長)を制して栄えある初代チャンピオンに輝いたのは──。福岡代表の「ホー・プ」である。リーダーを務めた湯通堂(ゆつどう)洋さん(いぶすき秀水園)は、祝福を受けて次のように語った。
「これで終わりではなく、僕らの提言がしっかり具現化される未来を目指して、頑張って動いていきます。僕らがいつかリーダーになったとき、しっかりと日本の観光産業を守っていけるような、『こいつらに任せれば大丈夫だ』と言われるような人材になりたいと思っています」

「ネクストリーダーズ」は2025年も継続。大阪、福岡、札幌、東京の順に各地で開催され、それぞれから選抜された代表チームによる最終決戦「全国 FINAL STAGE」は今回と同じく、2026年2月に開催予定の「HCJ2026」で行われることになる。
なお、参加対象は「宿泊・飲食業などのホスピタリティ産業*で勤続計5年以上働かれている20~30代の方」で、業界メーカーからの参加も可能である。
*ホスピタリティ産業:宿泊業、飲食業、ブライダル、航空業など、ビジネスにおいてホスピタリティが重要な業界。
取材・文/編集部
(2025 1/2/3 Vol. 750)
ネクストリーダーズ事務局
https://hcj.jma.or.jp/project/