技能五輪国際大会

世界の若手ホテリエが集結し技を競い合う

2024年9月にフランス・リヨンで開催された第47回技能五輪国際大会。ホテルレセプション部門では、日本代表選手として山本千遥(ちはる)さん(帝国ホテル 東京)が世界に挑み、エキスパートとして宮園岐(みち)さん(メズム東京、オートグラフ コレクション)が参加した。

技能五輪国際大会

若手技術者による2年に1度の技の競演

技能五輪国際大会は若手技術者がさまざまなものづくりの技術を競う大会で、原則として2年に1度開催され、世界各国・地域の予選会を勝ち抜いた22歳以下(一部の職種は25歳以下)の若手選手が集結する。ホテルレセプション職種が技能五輪国際大会の競技に加わったのは2019年のロシア・カザン大会。日本は翌大会からホテルレセプション職種に出場し、日本ホテル協会は、代表選手を派遣する中央職業能力開発協会(JAVADA)の要請でホテルレセプション職種の代表選考を行っている。

2023年に東京で開催した選考会により、第47回技能五輪国際大会への出場を決めたのは帝国ホテル 東京の山本千遥さん。国際大会に向けて、日本ホテル協会のバックアップのもと語学や接客などさまざまな研修を積み重ねた。国際大会には、加盟国を代表して大会の運営や競技の審査を行う「エキスパート」も参加する。日本のエキスパートには、メズム東京、オートグラフ コレクションの宮園岐さんが任命された。

選手同士の交流が広がった上海での研修

国際大会を2カ月後に控えた7月、中国・上海で事前研修が開催された。中国のエキスパートからの提案で実現した研修で、中国、香港、マカオ、日本の選手とエキスパートが参加。選手たちは本大会を想定した競技に挑み、各国のエキスパートがパフォーマンスに対するフィードバックを行った。

「本番と同じようにお客様役の方を相手にロールプレイを行ってもらいましたが、今の表現では分かりにくいのではないか、このシーンでは立ち上がってあいさつしたほうがいいのではないか、など、具体的なフィードバックが伝えられました」

そう語るのは、エキスパートの宮園さん。他の選手のパフォーマンスを見たり、エキスパートから指摘を受けたりすることで、国際大会までにするべき課題が見えてきたのではないかと分析。

「何より、同じ目標を持つ選手同士で交流できたことは、大変意義深いことだったと思います。親しくなった選手と一緒に出場するとあって、フランスでも心強かったのではないでしょうか」

本番さながらにロールプレイ形式でパフォーマンスを披露。
本番さながらにロールプレイ形式でパフォーマンスを披露。
上海研修の思い出に記念撮影。右は宮園さん、左は山本さん。
上海研修の思い出に記念撮影。右は宮園さん、左は山本さん。

世界のホテリエから学び、これからの業務に生かす

国際大会のホテルレセプション部門には22名の選手が参加。ホテル関連の学校で学ぶ学生の参加も多かったようだ。選手たちは、アメリカ・シアトルに実在するホテルをモデルとした架空のホテルの従業員となり、フロントでの対応や事務所での業務、グループインタビューなど複数の課題を、4日間にわたりこなしていく。

若手ホテリエによる熱戦を制し、金メダルを獲得したのはフランスとスイスの選手。続く銅メダルはインドとオーストリアの選手に贈られた。日本代表の山本さんは丁寧な日本のおもてなしを披露し、17位と健闘した。

お客様役のスタッフを相手に笑顔で接客する山本さん。やりとりはすべて英語で行う。
お客様役のスタッフを相手に笑顔で接客する山本さん。やりとりはすべて英語で行う。
緊張感漂う競技会場。各国のエキスパートが厳正な審査を行う。
緊張感漂う競技会場。各国のエキスパートが厳正な審査を行う。

金メダルに輝いた2選手は「お客様とのやりとりがスムーズで安心感のある接客だった」と宮園さんの評価。一方で、世界のホテリエのパフォーマンスを見て、日本で求められているおもてなしとの違いを実感したという。

「日本のホテルでは、お客様との距離を保つことをよしとしている風潮があるかもしれません。でも、技能五輪はヨーロッパで生まれた大会ということもあり、そこで繰り広げられるサービスは非常にアグレッシブといいますか、ロビーで休んでいるお客様にも積極的に声をかけて、何を望んでいるのかを聞き出していくというスタイル。日本の伝統的なホテルであれば、やや控えめに接するような場面でも、果敢にお客様にアプローチすることが評価につながる印象がありました」

宮園さん自身は外資系ホテルの経験が長く、欧米流のサービスを実践することが多いそうだ。ただ、どちらのサービスが優れているということではなく、多様なサービスの在り方に触れ、これからの業務に生かしていくことが、この大会に出場する意義でもあると語る。

次の技能五輪国際大会は2026年に中国・上海で開催される予定だ。「技能五輪に参加できるのは一生に一度しかありません。この貴重な機会を得るために、ぜひ過去の大会を研究してトレーニングに励んでほしいと願っています」と宮園さん。新たな若手ホテリエの挑戦に期待が寄せられる。

(2024 10/11/12 Vol. 749)

第47回技能五輪国際大会 日本代表選手の成績
https://www.mhlw.go.jp/content/11806001/001304593.pdf